強引社長の甘い罠
私は聡が手にした紙コップを差して言った。彼はいつもは給湯室のコーヒーサーバーを使っている。コーヒーにはわりとうるさい男なのだ。
聡が紙コップを持っていない方の手の平を上に向けて、肩を竦める。
「ああ、うん。ちょっと今は忙しいからね」
「井上くんのところはこれから本当に大変そうよね。七海さんとデートする時間もろくに取れなくなるんじゃないの?」
「お、及川さん…!」
会社でこういう話はあまりしたくない。私は慌てて及川さんの話を遮った。だが、聡は違うようだ。にこりと笑うと私の肩に手のひらを載せた。
「そうなったら唯は俺の家に住まわせるから大丈夫ですよ。どっちにしても今だって似たようなもんだし。な、唯?」
「ちょっと、聡……」
「やだー、ノロケられちゃった。はいはい、ご馳走さま。いいわねー、ラブラブなカップルは」
及川さんがペロリと舌を出して笑う。
私はソワソワと視線を彷徨わせた。何だか居心地が悪い。
「ラブラブって……及川さんは違うんですか? 唯から聞いてますけど、確か彼氏いるんですよね?」
及川さんの言葉にさすがに少し照れたのか、聡がほんの少し赤らんだ顔で聞いた。
「んー、いるにはいるんだけど……、なんかもうマンネリって言うの? そんな感じで。付き合いも長くなると結婚のタイミングも掴みづらくなるし、惰性でずるずる付き合ってる感じしかしないのよね。もう私も若くないし、そろそろ結婚も考えたいんだけど……このまま今の彼と付き合ってていいのか、って悩んじゃうわ」
「そんなもんなんですかねぇ」
「あなたたちだって、結構付き合い長いじゃない。七海さんだって私と一つしか歳が変わらないし、二人はそういうこと、考えたりしないの?」
「え、ちょ、ちょっと……及川さん!」
聡が紙コップを持っていない方の手の平を上に向けて、肩を竦める。
「ああ、うん。ちょっと今は忙しいからね」
「井上くんのところはこれから本当に大変そうよね。七海さんとデートする時間もろくに取れなくなるんじゃないの?」
「お、及川さん…!」
会社でこういう話はあまりしたくない。私は慌てて及川さんの話を遮った。だが、聡は違うようだ。にこりと笑うと私の肩に手のひらを載せた。
「そうなったら唯は俺の家に住まわせるから大丈夫ですよ。どっちにしても今だって似たようなもんだし。な、唯?」
「ちょっと、聡……」
「やだー、ノロケられちゃった。はいはい、ご馳走さま。いいわねー、ラブラブなカップルは」
及川さんがペロリと舌を出して笑う。
私はソワソワと視線を彷徨わせた。何だか居心地が悪い。
「ラブラブって……及川さんは違うんですか? 唯から聞いてますけど、確か彼氏いるんですよね?」
及川さんの言葉にさすがに少し照れたのか、聡がほんの少し赤らんだ顔で聞いた。
「んー、いるにはいるんだけど……、なんかもうマンネリって言うの? そんな感じで。付き合いも長くなると結婚のタイミングも掴みづらくなるし、惰性でずるずる付き合ってる感じしかしないのよね。もう私も若くないし、そろそろ結婚も考えたいんだけど……このまま今の彼と付き合ってていいのか、って悩んじゃうわ」
「そんなもんなんですかねぇ」
「あなたたちだって、結構付き合い長いじゃない。七海さんだって私と一つしか歳が変わらないし、二人はそういうこと、考えたりしないの?」
「え、ちょ、ちょっと……及川さん!」