強引社長の甘い罠
「驚いたでしょう? だから僕の方が伺うと言ったんです。もともと話しがあると言ったのは僕の方なんですから、幸子さんにわざわざ出向いていただく必要はなかったんですよ」

「あら、ごめんなさい。悪い意味で言ったんじゃないの。ただ、祥吾ならもっと広いオフィスが似合うと思っただけよ。アメリカのオフィスはあんなに立派なのに……」

「ここもそれほど悪くないですよ」

 俺の言葉に幸子さんが顔をしかめた。どうやら理解できないといった様子だ。俺は話題を変えることにした。

「実は今日ご連絡したのは、お伝えしなければならない大事なお話があったからなんです」

「……何かしら?」

 幸子さんが慎重に話の先を促した。彼女の体に緊張が走ったのが分かった。これから話す内容に見当をつけているのかもしれない。だったら話は早い。彼女の父親とのパイプを切るのは惜しいが、俺には譲れないものが出来てしまった。それを彼女に伝えて納得してもらわなければならない。

「一度きちんとお話しなければと思っていたんです。僕とあなたの結婚の話です」

「……ええ。まさか断るつもりだなんて言わないわよね?」

 俺との結婚をこれっぽっちも疑っていない目で、彼女が尋ねた。俺は小さく苦笑して首を振った。
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