強引社長の甘い罠
相手の声が聞こえた。男性だ。それに、この声には聞き覚えがある。何度も聞いてきた声だから間違えようもない。
「唯を騙している罪悪感もあった。所詮、人の心を思いのままに操るなんて無理なんだよ、佐伯さん」
相手の男性が少し動いたことによって、顔が見えた。やっぱり――。
「そんなの最初から分かってたことじゃない。だいたい井上くんは甘いのよ。昔からそう。優しすぎるんだわ。本当に手に入れたいなら、時には冷酷になることも必要だってこと、最初に話し合ったじゃない」
ハイヒールを履いた彼女を見下ろすようにしながら立っていたのは聡だった。何やら親しげな二人である。
「そんなことは分かってるさ。俺は別に優しくなんかない。唯を手に入れるため、君の計画にのったのがいい証拠だよ」
「まあ。まるで私がすごく悪い女みたいな言い方ね」
「まさか自分が純粋で無垢な女性だなんて言うつもりはないだろう?」
佐伯さんが笑う声が聞こえた。
「……分かったわ。それでどうするの? あなたは七海さんを諦めるの?」
聡が肩をすくめた。
「どうしようもないよ」
「そう。残念だわ。でも私はまだ諦めてないから。祥吾は確かに付き合っている女性がいると言っていたけれど、何か迷いがあるようだった。相手の名前は言わなかったけれど、七海さんであるのは間違いないわ。彼は七海さんとの交際を迷っているのかもしれない。でもおかしいことじゃないわよね。だってあの二人が別れてからもう何年も経つんですもの。それに二人が再会したときの祥吾の態度だって、好意的とは言い難かったわ。彼にはきっと何か考えがあるのよ。私には佐伯不動産があるし、彼は有能なビジネスマンよ。状況が変わる可能性は大いにあるわ。そのとき、あなたは後悔するんじゃないかしら?」
「唯を騙している罪悪感もあった。所詮、人の心を思いのままに操るなんて無理なんだよ、佐伯さん」
相手の男性が少し動いたことによって、顔が見えた。やっぱり――。
「そんなの最初から分かってたことじゃない。だいたい井上くんは甘いのよ。昔からそう。優しすぎるんだわ。本当に手に入れたいなら、時には冷酷になることも必要だってこと、最初に話し合ったじゃない」
ハイヒールを履いた彼女を見下ろすようにしながら立っていたのは聡だった。何やら親しげな二人である。
「そんなことは分かってるさ。俺は別に優しくなんかない。唯を手に入れるため、君の計画にのったのがいい証拠だよ」
「まあ。まるで私がすごく悪い女みたいな言い方ね」
「まさか自分が純粋で無垢な女性だなんて言うつもりはないだろう?」
佐伯さんが笑う声が聞こえた。
「……分かったわ。それでどうするの? あなたは七海さんを諦めるの?」
聡が肩をすくめた。
「どうしようもないよ」
「そう。残念だわ。でも私はまだ諦めてないから。祥吾は確かに付き合っている女性がいると言っていたけれど、何か迷いがあるようだった。相手の名前は言わなかったけれど、七海さんであるのは間違いないわ。彼は七海さんとの交際を迷っているのかもしれない。でもおかしいことじゃないわよね。だってあの二人が別れてからもう何年も経つんですもの。それに二人が再会したときの祥吾の態度だって、好意的とは言い難かったわ。彼にはきっと何か考えがあるのよ。私には佐伯不動産があるし、彼は有能なビジネスマンよ。状況が変わる可能性は大いにあるわ。そのとき、あなたは後悔するんじゃないかしら?」