強引社長の甘い罠
「お疲れさま」

明るくいつもの調子で声を掛けると、聡はその顔にほんの少し笑みを浮かべる。

「うん。……こんな時間に呼び出してごめんな?」

「大丈夫よ。ここなら家から近いし、コンビニに行くのと変わらないから」

 ウェイトレスがやって来て、聡の前に水の入ったコップを置きながら注文を聞く。学生のアルバイトらしきその子の頰がうっすらピンクに染まっているのは、化粧のせいだけでないことは容易に分かった。さかんに瞬きを繰り返し、聡の気を引きたくて仕方がないといった様子に、私は苦笑するしかなかった。聡は全く気にする素振りもない。

聡がチラリと私の方へ視線を走らせて、私が注文しているものを確認した。私の目の前には飲みかけのアイスティーが置いてある。

「アイスコーヒーを」

聡が言うと、ウェイトレスは可愛らしく頷いて去っていった。

「聡、何も食べてないよね? 何か注文しようか?」

 聡が私に合わせて飲み物だけを注文したので聞いてみたけど、彼は首を振った。

「いや……。今日はいいよ。あ、それとも唯がまだ食べてなかった?」

「ううん。私はもう済ませたんだけど……」

「そっか。じゃあ俺も後で食べるからいいよ。それよりもまずは昼間のことを説明させて欲しいんだ……」

「う、うん…」
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