強引社長の甘い罠
 気まずさに、しばらくの沈黙があった。俯いたまま、目線だけ上げて目の前の聡を見ると、彼も同じらしい。説明したいと言いながら、どう説明したらいいかを考えているようだ。
ウェイトレスが聡のアイスコーヒーを運んでくると、聡はストローを使わず、グラスに直接口を付けて一口飲んでから真っ直ぐ私を見つめた。ゆっくりと話し始める。

「……俺と佐伯さんは、実は大学時代の友人なんだ」

私の目を真正面から見据えて、私の反応を窺っている。

「……そうだったんだ」

意外な二人の関係に驚いたけど、昼間、会社の資料室で二人を見てから、以前からの知り合いであろうことは想像していた。どういう関係かまでは分からなかったけれど、とにかく知人なのだろうと思った。だから冷静に反応することができた。映画館で祥吾と一緒にいた佐伯さんと話したときは、二人とも初対面のように振舞っていたけれど、あれはわざとだったということだ。

「あまり驚かないんだね」

案の定、聡が言った。

「驚いてるけど、二人のやり取りを聞いてしまってから、そうなのかな、とも思っていたから。その……話してた内容的にも」

ためらいがちに言った。
今回の仕事で初めて会って親しくなったとは考えにくい話を、二人はしていた。私と、祥吾のことについて……。

「そっか、それもそうだね」

聡が苦笑する。
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