強引社長の甘い罠
仕事を終えた私は、そのまま真っ直ぐ祥吾のマンションへとやってきた。だけどそこで気がついた。彼のマンションは私のアパートと違ってセキュリティが万全だということに。
祥吾はこのマンションに月数十万円を支払っている。ほとんど寝るだけのためのマンションに毎月そんな大金を支払うなんて、これも私に言わせれば馬鹿らしくて仕方がない。けれどとにかく彼はここに住み、無駄とも思える支払いをしているのだ。
マンション前の通りからエントランスを覗いてみた。思えばこうして一階のエントランスからこのマンションを見るのは初めてかもしれない。とにかく大きくて、まるでどこかのデパートのようだ。ほとんどがガラスでできている一階の壁は周りをたくさんの石灰岩でできた柱で囲まれている。私はその柱に背を預け祥吾が戻るのを待っていた。
本当は地下駐車場へ行き、祥吾の車があるかどうかを確認したい。だけど私が一人でその場所へ行くことは出来なかった。
今、マンションの自動ドアの向こう側で、優雅な動作で大理石でできたカウンターを回りこみ、椅子に腰を降ろしたメガネの男性のコンシェルジュにも祥吾への取次ぎをお願いしたけれど、無駄だった。しつこく食い下がる私に、彼はにこやかな笑顔で「お待ちください」といい、カウンターの向こうで何か――おそらく居住者から渡されている受付可能な来客のリストといったところ――を入念に確認したあと、取次ぎは出来ないことをキッパリと私に告げた。尚も退かない私を不審者を見つけたような目で睨みつけて追い返した彼のことは、後で祥吾に会ったときに文句の一つでも言うつもり。でもその前に、私をリストに追加しておかなかったことを糾弾するのが先だ。
祥吾はこのマンションに月数十万円を支払っている。ほとんど寝るだけのためのマンションに毎月そんな大金を支払うなんて、これも私に言わせれば馬鹿らしくて仕方がない。けれどとにかく彼はここに住み、無駄とも思える支払いをしているのだ。
マンション前の通りからエントランスを覗いてみた。思えばこうして一階のエントランスからこのマンションを見るのは初めてかもしれない。とにかく大きくて、まるでどこかのデパートのようだ。ほとんどがガラスでできている一階の壁は周りをたくさんの石灰岩でできた柱で囲まれている。私はその柱に背を預け祥吾が戻るのを待っていた。
本当は地下駐車場へ行き、祥吾の車があるかどうかを確認したい。だけど私が一人でその場所へ行くことは出来なかった。
今、マンションの自動ドアの向こう側で、優雅な動作で大理石でできたカウンターを回りこみ、椅子に腰を降ろしたメガネの男性のコンシェルジュにも祥吾への取次ぎをお願いしたけれど、無駄だった。しつこく食い下がる私に、彼はにこやかな笑顔で「お待ちください」といい、カウンターの向こうで何か――おそらく居住者から渡されている受付可能な来客のリストといったところ――を入念に確認したあと、取次ぎは出来ないことをキッパリと私に告げた。尚も退かない私を不審者を見つけたような目で睨みつけて追い返した彼のことは、後で祥吾に会ったときに文句の一つでも言うつもり。でもその前に、私をリストに追加しておかなかったことを糾弾するのが先だ。