強引社長の甘い罠
 盲目的に恋をしていた七年前の私と、今の私は、何一つ変わっていなかった。変わったのは周りの環境だけ。私の隣に聡がいるように、彼の隣には佐伯さんがいる。
 そして、彼が私を見つめる眼差しも、あの頃とは違ってしまった。彼の優しい瞳の色を、私の名を呼ぶ低く艶めいた甘い声を、私はこんなにもはっきりと覚えているのに。

 まるで重い鉛を飲み込んでしまったように、喉が詰まって胸が締め付けられる。こんなに苦しい想いを抱えて、私はどうしたらいいの?

「唯? 聞いてる?」

 気づけばフォークを置いた聡が私の顔を覗き込んでいた。私はパスタの絡みついたフォークを手にしたまま、それを口に運ぶことなく物思いに耽っていたのだ。

「あ…ご、ごめん」

「どうしたの、唯? この間から少し変だよ」

「ごめん…」

 私は項垂れた。言い訳の言葉もない。聡と一緒にいるというのに、私の頭の中は祥吾でいっぱいなのだ。

「唯、大丈夫? 疲れてるなら、今日はもう帰ろうか?」

「ううん……平気」

 聡は相変わらず優しい。
 こうして二人、向き合っている間も、私が本当は祥吾のことを考えていると知ったら、彼は何を思うだろう。
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