強引社長の甘い罠
 そう言うが早いか、彼らは手馴れた動作でワゴンを室内に運び込み、大きすぎるダイニングテーブルの真ん中でテーブルセッティングを始めた。私はそんな彼らの仕事ぶりを呆然と眺める。

 祥吾が食事を頼んだですって? 彼がどういうつもりでこんなことをするのか理解できない私は、先ほどからずっとくすぶっている感情をもてあましていた。彼に言いたいことの一つも言えないでいるから苛立ちでストレスがたまってしまっている。

 クロッシュのせいで中身を確認することはできないけど、いったいいくつのお皿が並んでいるのだろう。これを一人で食べろというの? そもそも私は食欲がない。

「あの、これって本当に一人分なんですか?」

 手際よく料理を並べ終えようとしていた彼らにおずおずと話しかけてみる。すると私の目の前で料理を並べていた背の低い方の客室係が困惑した表情を見せた。私、何かおかしなこと言った? 戸惑って意味のない愛想笑いを返す。

「えっと……」

 言いにくそうにしながらその客室係が言った。

「お二人分、ご用意させていただいております」

「へ?」

 目をしばたたかせる。すると彼はもう一度繰り返した。
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