強引社長の甘い罠
* * *

 翌日。打ち合わせに出掛ける準備をしていた私は鈴木課長に呼ばれた。

「課長、何でしょうか?」

「ああ、七海さん。あなたこの後、組合の事務局で打ち合わせよね?」

「はい、そうですが」

「ちょうど良かった。さっき電話があって、今日は社長も同行されるそうよ」

「えっ?」

 鈴木課長の言葉に私は驚き、少し大きな声を出してしまった。その意味を課長は勘違いしたらしい。少し困ったように肩を竦めると微笑んだ。

「ああ、ごめんなさい。これじゃどちらの社長か分からないわね。桐原社長よ。もともとこの仕事は彼が持ってきたものですものね。どんな感じで進めていくのかを見ておきたいらしいわ」

「え、でも……今日、これから……ですか?」

「そうよ。どうしたの? 何か都合が悪いことでもあるの?」

「いえ……そうではありませんが……」

 突然の話に、私は狼狽を隠せない。そんな私の様子をじっと見つめていた課長はやはり見当違いなことを言った。
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