強引社長の甘い罠
「今回ご用意させていただいたデザインは、今、お渡ししました三パターンございます。最初に伺っていたご要望に沿って考えました。この中からご検討いただき、最終デザインを一つに絞っていただきます。もちろん、細かい修正は可能ですのでおっしゃって下さい」

 私の言葉に、彼らが資料をパラパラとめくっている。この瞬間はいつも緊張する。いくら祥吾や他の誰かが私の仕事を認めてくれても、これがクライアントに認められなければ、意味がないのだ。

 私はここにきて初めて、隣の祥吾の存在を頭の中から追い出すことができた。

「これは画面上でも確認できるのよね?」

 佐伯さんが尋ねた。

「ええ。用意しております。もちろん、現時点ではテスト用ですので、全ての動作が可能なわけではありません。こちらで用意した値を入れていただくことによってしか、動作しないようになっております」

「もちろん、構わないわ。見せてちょうだい」

「はい」

 私はパソコンに、用意しておいた試験用サーバーのIPアドレスを打ち込んだ。
 だが、エラーが出てしまった。打ち間違えたと思い、手帳を取り出し確認してから、もう一度打ち込んだ。が、結果は同じだ。

 自分の顔が蒼ざめていくのを感じた。昨夜、自分が何をどうしたかをよく思い起こしてみる。
 確か、自分のパソコンで全ての動作を確認した後、サーバーにアップロードしたはず。アップロード先はこの試験用サーバーで……。
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