強引社長の甘い罠
「……あっ」

 小さな声を漏らしてしまった。そして慌てて口を抑える。

「……どうしたの?」

 向かいに座る佐伯さんと、眼鏡の藤本さんが怪訝な表情をした。隣に座る祥吾の視線も痛いほど感じてしまう。

 私はミスを犯した。未だかつて、こんな初歩的なミスは犯したことがない。
 ここでテスト用ページを見せ、簡単な動作シミュレーションをしてもらうつもりだった。だが、これではページを見ることさえできない。

 私は、アップロードするサーバーを間違えたのだ。
 昨夜、私は確かにファイルを転送したはずだ。だけど、よく思い返せば、そのサーバーは社外アクセス不可のサーバーだ。社内と指定された限られたパソコンからはアクセスできても、その他社外のネットワーク環境からは一切拒否される。

「……も、申し訳ありません。少々お時間をいただけますでしょうか」

「どうしたのよ。見られないの?」

「……はい、現時点では……申し訳ありません……」

 佐伯さんの鋭い問いかけにも、私は項垂れるしかなかった。こんなミスを犯すなんて、どうかしている……。叱責されて当然だ。
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