強引社長の甘い罠
私はスマホを取り出すと、すぐにシステム開発室直通の番号に電話を掛けた。電話に出たのは春に入社したばかりの皆川ルリさんだった。彼女の肩甲骨の下まで伸ばした明るめの茶色い髪は真っ直ぐサラサラで、私はいつも羨ましく思っている。
彼女では分からないかもしれない。
「お疲れ様です、七海です。及川さんお願いできますか?」
『お疲れ様です~。及川さんなら出掛けてますよ。というか今、誰もいないんですよー。七海さん早く帰って来てくださいよ』
彼女が少し情けない声を出した。
「誰もいないの? そこにいるのは皆川さんだけ?」
『そうなんですよ。皆出払ってまして。あ、でも鈴木課長とかは別室で会議みたいですけど。何か重要な会議らしくて、電話も回さないように言われてるんです。後から折り返すからって』
「そんな……」
よりによって、こんなときに誰もいないだなんて。仕事柄、皆が出払ってしまうなんてことは、滅多にないのだ。
「どうかしたのか?」
私の電話のやり取りを聞いていた祥吾が横から口を挟む。私はおろおろとしたまま、祥吾に事情を説明した。
私の話を聞いた祥吾がまたしても大きな溜息を吐いた。心底呆れたに違いない。
彼女では分からないかもしれない。
「お疲れ様です、七海です。及川さんお願いできますか?」
『お疲れ様です~。及川さんなら出掛けてますよ。というか今、誰もいないんですよー。七海さん早く帰って来てくださいよ』
彼女が少し情けない声を出した。
「誰もいないの? そこにいるのは皆川さんだけ?」
『そうなんですよ。皆出払ってまして。あ、でも鈴木課長とかは別室で会議みたいですけど。何か重要な会議らしくて、電話も回さないように言われてるんです。後から折り返すからって』
「そんな……」
よりによって、こんなときに誰もいないだなんて。仕事柄、皆が出払ってしまうなんてことは、滅多にないのだ。
「どうかしたのか?」
私の電話のやり取りを聞いていた祥吾が横から口を挟む。私はおろおろとしたまま、祥吾に事情を説明した。
私の話を聞いた祥吾がまたしても大きな溜息を吐いた。心底呆れたに違いない。