強引社長の甘い罠
「電話、貸して」
祥吾が私のスマホを取った。皆川さんに何やら指示を出している。暫くそのまま無言が続いた後、祥吾が話し始めた。
どうやら電話の相手を誰かに代わってもらったらしい。
祥吾が私のスマホを耳から外すと、通話口を押さえながら小声で言った。
「移動するディレクトリ名とサーバーのパスは?」
私は今回のデータが入ったディレクトリ名とサーバーのフルパスを手帳にサラサラと書き込んだ。彼はそれを電話口の相手に伝えている。そして暫く後、お礼を言った祥吾は電話を切った。
「はい。数分後には見れるように頼んでおいたから」
「ありがとうございます。あの……、申し訳ありませんでした」
祥吾からスマホを受け取りながら、私は深々とお辞儀をして御礼を言い、謝った。顔を上げると、彼は眉尻を下げ、少し困ったような視線を私に向けている。
こんな失敗をするようじゃ、駄目だ。いくら動揺するような出来事があったからと言って、仕事に支障をきたしていいわけがない。
私は深く項垂れると、唇を噛み締め黙り込んでしまった。
その後、祥吾のおかげで、約束の十分が経った頃には佐伯さんと藤本さんに問題のページをちゃんと確認してもらうことが出来た。
祥吾の手前もあってだろうか、彼らは私の失敗をそれ以上咎めることなく、提出した三パターンの中から明るめの色を使った案を推してきた。最終的に組合で決を採り、決まったら連絡するということで、打ち合わせは終了した。
祥吾が私のスマホを取った。皆川さんに何やら指示を出している。暫くそのまま無言が続いた後、祥吾が話し始めた。
どうやら電話の相手を誰かに代わってもらったらしい。
祥吾が私のスマホを耳から外すと、通話口を押さえながら小声で言った。
「移動するディレクトリ名とサーバーのパスは?」
私は今回のデータが入ったディレクトリ名とサーバーのフルパスを手帳にサラサラと書き込んだ。彼はそれを電話口の相手に伝えている。そして暫く後、お礼を言った祥吾は電話を切った。
「はい。数分後には見れるように頼んでおいたから」
「ありがとうございます。あの……、申し訳ありませんでした」
祥吾からスマホを受け取りながら、私は深々とお辞儀をして御礼を言い、謝った。顔を上げると、彼は眉尻を下げ、少し困ったような視線を私に向けている。
こんな失敗をするようじゃ、駄目だ。いくら動揺するような出来事があったからと言って、仕事に支障をきたしていいわけがない。
私は深く項垂れると、唇を噛み締め黙り込んでしまった。
その後、祥吾のおかげで、約束の十分が経った頃には佐伯さんと藤本さんに問題のページをちゃんと確認してもらうことが出来た。
祥吾の手前もあってだろうか、彼らは私の失敗をそれ以上咎めることなく、提出した三パターンの中から明るめの色を使った案を推してきた。最終的に組合で決を採り、決まったら連絡するということで、打ち合わせは終了した。