不都合と好都合
「俺、天ざるとビールね。」
ウエイトレスがオーダーを取りに来た。
「天ざる2つと生ビール1つ。」
めぐみがオーダーを済ませると、
「お前、和風スパゲッティじゃなかったの?いつも俺の真似するね。」
夫の不思議そうな顔に
「だって。天ざるが食べたくなったんだもん!」
めぐみは笑顔で答えた。
めぐみはいつも夫と同じ物を頼む事になるのだった。どうしてそうしたくなるのか、彼女にも分からないがそういう性分らしかった。
「近所の人達はどんな感じだった?」
おてふきで顔をふきながら夫が聞いた。
「皆さんいい人達よ。中には癖の強そうな人も居るけどね。どこでもそんな感じでしょうね。」
「まあ、そうだね。特別いやそうな人がいないんなら良かったな。せっかく買った家だもんな。近所付き合いでいやな思いしたくないもんな。」
「あなた好みのきれいな女の人もいたわよ。」
夫はかねてよりメンクイを自称していた。めぐみはそれほどきれいな方でもないのに、なぜ自分が選ばれたのか不思議だった。まあ、夫の雅夫も男前とは程遠いが。
「え?どこの家?独身?」
雅夫は茶目っ気たっぷりに身を乗り出して聞いた。だがそこに、生ビールが到着したので、とりあえずは生ビールを堪能したのであった。
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