レイアップ


「決めてたんだ。シュウイチが、今でも私の好きなシュウイチのままだったら告白しようって」

おれはただ黙ってユキの言葉の続きを待った。もう逃げられない。心臓の鼓動がドクドクとテンポを上げて脈打つのを感じる。


「好きだよシュウイチ。ずっと前から、そして今も。私は桐山秀一のことが大好きです」


小さな声で、みじんの動揺も感じさせない顔で、ユキはいった。

まるで、アンドロイドの口から出たような、ある種機械的なその口調は、おれの胸に真っ直ぐ突き刺さった。おれは必死で考えた。慎重に言葉を頭の中で選び抜く。ユキを傷つけることがないように。

でも、そんな言葉なんてあるはずが無かった。この世にそんな都合のいいセリフなんて存在しない。何も言えずに口の中の水分が乾ききって唾を飲む自分が情けなかった。


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