レイアップ
なるほど。あのハーフが敵の秘密兵器か。
ケイトがコートに入った途端、さっきまで思いがけない接戦でひきつっていた敵チームの表情に、安堵と自信の色が同時に浮かぶ。
一年前のおれは、舌を出してケイトが仕掛けてくる攻撃を待っていた。
「ナンバースリー」
素早くコートを見渡してケイトが三本指を立てた。その掛け声と同時に敵チームが一斉に動き出す。
さっきまでベンチで見ていたチームとはまるで別チームのように、なんとなく統一感のなかったプレーから一変して、機械仕掛のようなナンバープレー。
ハイポストに上がったセンターにボールが入る。デフェンスを引き付け、スクリーンでノーマーク気味になったアウトサイドにパス出し。ボールを受け取ったフォワードは、やや遅れてディフェンスにつく相手にワンフェイクを入れ、ドライブで切り込む。あとはシュートを決めるだけ。
だが、そんな上手くはやらせない。おれはアウトラインギリギリを切れ込んできた敵のコースを完全に塞いだ。
(この程度かよ)。
一年前のおれが、心の中でそう呟く。