レイアップ
『え~なになに!なんかあったの』
『うわっ。血出てるよ』
『スゲーな。こんなとこで喧嘩?てか、ユニフォーム同じじゃね?』
『仲間割れだろ』
『すごぉ~い。私初めて生で喧嘩する人見たんだけど。あれどこのガッコかな?』
『ん?あれ○○中の桐山じゃね?』
『ウソ!マジかよ!?』
それはミウの記憶だった。やはりミウは、あの試合もおれのことを見ていたんだ。南スタンドの観客席。夢で見たミウのいた場所と一緒だ。
『あ~あ。これでアイツも終わったな』
『ワンマンなチームだったからな。桐山も相当不満たまってたんじゃねえの』
『不満なら他のメンバーの方があるだろ。おれらと戦った時も、桐山一人目立ってたじゃん』
『にしても、勝てないからってチームメイトにあたんなくてもなぁ』
『いえてる。見てるこっちが恥ずかしいよな。なに熱くなってんだよ。バカな奴』
好き勝手な野次馬達の声がスタンドを覆う。中には目を輝かせて、コートへケータイを向けている奴もいる。どこか間抜けに聴こえる機械的なシャッター音。
そんな雑音を切り裂くように、ミウの瑞々しく力強い声が響いた。