レイアップ
「バカはあんたらでしょ。少し黙ってなさいよ。クズ」
後ろを振り返ると、おれの身体をすり抜けたミウが笑っていた。よく見るとミウの身体は、所々薄い霧がかかったように、向こう側が透けて見えている。
「ミウ、おまえ・・・」
「あの試合でさ、シュウがチームメイトを殴り突けてる姿を見て、なんとなく思ったんだ。この人は本当にバスケが好きなんだなって。私とは全然違う。悔しかったな。完敗だったよ」
もう見ていられなかった。弱い風が吹くだけで、霧がかったミウの身体のほとんどが消えてしまう。声はしっかり聞こえるのに、ミウの存在はロウソクの炎のように危うい。
「どんなに辛くても、どんなに苦しくても、たとえ今が楽しくなくたって、シュウはバスケを嫌いにはなれない。それってすごい才能だと思わない?」
風がおさまり、ミウの実体はなんとか形を取り戻す。おれはロウソクの火を消さないように、慎重にいった。
「かいかぶりすぎだ」