レイアップ


「そんなことないよ。だって私は、もう一度バスケしたいって思ったもん。あの時、私はもう一度自分の才能を取り戻したの。もし、シュウに出会わなければ死ぬまで・・・」

ミウは途中で言葉を切ってふっと笑った。

「きっと、死んでもバスケなんかしようと思わなかったよ。降り続いていた雨が、ようやく止んだ気がした」

「大袈裟だな」

「だって本当の事だもん。あの日から私の目標はハッキリ決まった。もう一度コートに立って試合に出る。その為に勉強だって死ぬほど頑張ったんだよ。親に迷惑かけないように、絶対無理だって言われた県立の高校にも合格した」

耳の痛い話だ。私立校の学費の高さに、うちのオフクロは毎月ぶつぶつ文句をいっている。

「でもね、バスケの神様は、一度バスケを捨てた私を許してくれなかったんだ」

「バスケの神様?」

バスケの神様なんてマイケル・ジョーダンくらいしかおれは知らない。もし、他に神様がいるのなら、なんで神様は、ミウの命を救ってくれなかったのだろう。なんでミウの母親の命を奪っていったのだろう。おれには、どうしてもその神様が死神にしか思えなかった。


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