レイアップ


「ホント、勘弁してよってかんじだよね。せっかく人がやる気取り戻したってのに、いきなり出鼻挫かれたっていうか、へし折られたってかんじ?」

「どういうことだよ」

ミウは、おれが聞き返すのを待っていたかのように、思い出し笑いをしながら、目をキラリと輝かせた。まるで、どこに出しても鉄板のすべらない話を披露するかのように。だが、おれは全然笑えなかった。だってそれは、ミウが最後に挑んだ、大いなる試練と、夢と、希望の物語だったから。

「バスケ部がなかったの」

「は?」

思わずバカみたいな声が漏れた。ミウは予想通りのおれのリアクションに、ケタケタと笑う。

「笑っちゃうよね。必死で入学した高校に、肝心のバスケ部がないなんて、間抜けすぎるでしょ。でも、普通そんなメジャーな部がないなんて考えないよね」

たしかにそうだ。中学、高校のスポーツ人口の中で、バスケは確実にベスト3にはランクしている(はずだ)。ミウのいう通り、そんな部活が存在しないなんてまず考えない。うちみたいな高校ならともかく、ミウやユキがいるのは文武両道の名門女子高だ。だとしたら、考えられる理由は限られていた。

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