レイアップ
久しぶりにバッシュに足を通した。もう一生履くことはないと思っていたのに、いったいおれは、どうしてしまったのだろう。
体育館の床板に足がピッタリと吸い付く感覚。床をこすると、キュッと懐かしい音がして、思わず顔から笑みがこぼれた。
「なにニヤニヤしてんのよ気持ちワルい」
うっかり不覚をとってしまった。慌てて平静を装う。
「べつに」
「素直じゃないなー。まあ、練習相手になってくれれば文句ないけど」
「てゆーか、練習するならちゃんと着替えろよ」
ミウは昨日と同じ制服姿で、足元にバッシュだけ履いていた。
「シュウだって制服じゃん。本気じゃないってことでしょ。だから私も制服なの」
女の子相手に本気になれというのが無理な話だ。それに今更ら真剣にバスケをするつもりもなかったので、練習着なんて持ってきていなかった。
「女が相手だから手加減するってわけ?いい暇潰しくらいに思ってるんでしょ?」
まさに図星。鋭い女。
「別に、手加減してるわけじゃないよ。昨日約束したとき、ミウはバッシュをもってこいとはいったけど、着替えてこいとまではいってなかっただろ」
「じゃあ、そういうことにしといてあげる」