レイアップ

「昔からユキは女にもよくモテたもんな。空手やってるし、その辺の男より断然強くて頼りになるんだろ」

おれのフォローにもユキは浮かない顔だ。

「そんなに頼られても困るんだけどな。それに私もう空手辞めちゃたし」

「えっ?」

思わず声がでた。確かに聖南は有名大学に何人も合格者を出している昔からの進学校だ。いくらユキでも文武両道とまではいかないのだろうか。

「そんなに驚かなくてもいいでしょ」

ユキは何ともない顔でこっちを見る。

「やっぱ、空手辞めなきゃやってけないほど勉強大変なのか?」

おれが聞くと、ユキは首を横に振りながら笑った。


「そうじゃないよ。もともと、高校に入ったら辞めよと思ってたんだ。やっぱり格闘技やってると変に筋肉がつきすぎちゃうでしょ?それがちょっとイヤだったんだ。」

そんなことをユキが気にしていたなんて意外だった。

確かに、ユキの拳や、蹴りは、どれをとっても殺人的破壊力だけど、おれが見るかぎりユキの体には目立ってガッシリとした筋肉も無く、逆に引き締まった腕や脚はスタイル良く見える。それくらいのことで簡単に辞めてしまうなんて、勿体無い気がした。


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