レイアップ

「じゃあ、今はなにやってんだ?」

ユキの運動神経ならどのスポーツをやらしてもいい線までいけるだろう。文化系の部活は性格上あまり考えにくい。外見の涼しいイメージとは裏腹に、ユキはおとなしく絵を描いたり、歌を歌ったりしてエネルギーを発散するタイプではなかった。必ずどこがで身体を動かさないとストレスが溜まってしまうのだ。
だが、ユキの答えはまたしても意外なものだった。


「帰宅部・・・」

「冗談だろ?」

放課後、真っ直ぐ家へ帰るユキの姿がどうしても想像できなかった。

「ホントだよ。だから今こうして制服着て夏休みなのに学校行ってるんでしょ」

「どういうことだよ?」

「いろんな部活見て回ってるの。でも、イマイチぴんとくるのがないんだよね。そろそろ決めちゃいたいんだけど」

「へぇ」

なるほどそういうことか。わざわざ、夏休みを使ってまで部活巡りをしている所が、いかにもユキらしかった。
慎重で、自分の納得がいくまで考える。ユキの頭には「適当」という文字は無いのだ。

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