レイアップ


「そういえば、シュウイチはなんで制服着てるの?」

急にユキにつっこまれて、答えに詰まった。最近、毎日学校に忍び込んでいる為、外へ出るときは制服を着るのが癖になっている。

かといって、それをそのままユキに喋るのはなんとなく嫌だった。ミウのこともなかなか聞き出すタイミングが浮かばない。

とりあえず、その場で思いついた嘘をユキにいった。

「補習があるんだ。一学期は赤点のオンパレードだったからな。今日もこの後みっちりお勉強」

半分は本当のことだった。実際、おれのテストの点数はどの教科もロースコアで押さえられ、とても人に見せられるような内容じゃなかった。しかし、いくら悪い点数をとったからといって、うちの学校に補習なんてあるはずがない。毎日学校に通いさえすれば卒業できるやさしい学舎なのだ。
教師たちは生徒の学力よりも、外でなにか問題を起こされないかが心配で、夏休み中街の見回りに必死になっている。まったくご苦労な話だ。ユキは少し疑り深い目をしていたが一応納得したようだった。


「ふーん。そうなんだ、大変だね」



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