不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 ニヤニヤと冗談めかした口調で瀬戸さんにそう言われて、私は愛想笑いどころか、顔が青ざめそうだった。

「い、行ってきます!!」

「頑張って! 風見くんによろしくね」

 立ち上がってガバっと深く頭を下げ、私は上着を羽織りながらあわててお店をあとにした。
 こんなに全力で走ったのはいつぶりだろう。

 私はいつも奥手で。
 人に譲って気を遣って……流れに流されるままだった。

 それで自分が損をしていると思ったことは一度もないし、それでいいと思っていた。
 だから本気でなにかを得たいと、必死になったことなんて今までなかったのかもしれない。

 走っていると、普段運動不足なせいか、だんだん息が切れてきた。
 ヒールの高い靴を履いているわけでもない。
 だけど一応はパンプスだから、それがまたスニーカーとは違って走りにくい。

< 274 / 298 >

この作品をシェア

pagetop