愛してる、愛される。
愛してる
朝はいつもあわただしい。時間に追われて、何かにせかされるように急がなくてはならない。15分でメイクと髪の毛をセットし、10分で朝食を食べる。最後の5分で持ち物をチェックし、あたしの朝は30分で終わるのだ。
急いで駅まで自転車で向かい、電車に乗った。
あたしが働いている会社は、最寄の駅から2駅先の場所にあって駅からも歩いて近いので通勤は苦にならなかった。
朝、会社に着くと、先日一緒に飲み会にいった子が「先輩~、あたし実は彼と付き合う事になったんですぅ」とくねくねしながら言った。
それは一番最初に居なくなった女の子だった。
「そうなの~!!よかったねぇ。勇気くんって言ったっけ?」必死に彼の名前を思い出した。
「はいっっ!!!昨日、勇気に告られちゃったんですぅ~」とキャハキャハ笑った。
彼女はあたしより1コ下なだけなのに、妙にテンションが高い。しかも若い。と言うか幼稚なんだろうか・・・。
「先輩はどうだったんですかぁ?」あたしの顔を覗き込むように問いかける彼女。
「あたしは、別に何もないの」と言うと「あの無口な彼と最後まで残ったって聴いたんですけどぉ~・・・やっぱ何も話さなかったんですかぁ?」
この子の話し方に何かイラツクあたし。
「ううん。話したよ。彼、人見知りだったみたい。」そう言って更衣室へ向かった。
彼女も付いてきて更に話しかけてくる。
「そうだったんだぁ~・・・あたし実は彼の顔が一番タイプだったんですけどぉ~全然話してくれないから、あたしには興味ないんだって思って諦めたんですぅ~」
ちらりと彼女を見てみるとつまらなそうに巻いた毛先をくるくるしていた。
「そう言えば、みどりちゃんはどうなったんだろぉ~」
みどりちゃんと言うのは2番目に居なくなった子で、この子はあたしの3コ下でシッカリ物で経理をやっていた。
「あたしチョット聞いてきますねぇ~」と言って更衣室から出て行った。
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