ツンデレ専務と恋人協定
「送ってく」


専務は背中を向けてタクシーが走る道路の方へと歩いて行こうとする。

私はその専務の腕を後ろから掴んだ。

何も言葉にする勇気もないのに、まだ帰りたくなくて、一緒いたいって思うことがどれだけ我が儘かはわかってる。

だけど、体が咄嗟に動いて専務の腕を掴んでいた。


「どうした?」


振り返って優しい声で聞いてくれる専務に、一度止まった涙がまた出てきそうになる。


「ごめんなさい」

「キスしていいか?」

「えっ?」


真面目な顔で言う専務が冗談じゃないのはわかる。


「泣くなよ?」


専務はそう言って、私の顔を見ながらゆっくりと顔を近づけてきて、私が目を閉じると唇に専務の唇を感じた。

周りにいっぱい人がいるだとか、通りすがりの人に見られるとかそんなことも気にならないくらい私は専務しか見えなくなっていた。

ゆっくりと離れて行く唇と、もう少し専務に触れていたくて私は勝手に専務の胸に顔を埋めた。

専務は私を包み込むように腕を回して抱きしめてくれる。


「……専務」

「ん?」


頭の上からまた専務の優しい声が聞こえてきて、それだけで胸がキュッとなる。


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