夢幻泡影
二人が再会したのは


箱館


「土方さん、お客様です」

「少し待っててもらえるか」

「もう、お通ししております」

ガタンッ

入口を見て、土方が立ち上がる

と同時に椅子が倒れた


「ふふふっ幽霊でも見たようね?」

「瑛…瑛か!!」

「はい!瑛です!」


土方が瑛を抱きしめる


「子供は?」


首を横に振る


「死産でした」

「なんで…文をくれなかった?」

「出せなかったの…」

「何かあったのか?」

「知らせたら、土方さん
飛んでくるでしょ?
新選組には土方さんが必要だから」

「瑛…」

「ずっと箱館にいたの!
まさか、土方さんに逢えるなんて…
夢みたい!!」

「綺麗だ!瑛!」

「土方さんや新選組が、そうしてくれたのよ!?
ありがとう…」



泣いていた

会えた喜びと…

これが最後の会話





「あたし…長くないらしいの」










それから… 一ヶ月後




明治二年五月





土方と同じ日に瑛は、この世を去った











治癒人の存在は、どこにも残らない








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