聖夜に舞い降りた天使
時が経つのも忘れ、立ち尽くして見つめていた……


僕の意識はまるでこの世にはないような気がした。

ここが死後の世界なのだと言われたとしても納得してしまうだろう。


身体の細胞ひとつひとつが彼女の紡ぎ出す美しい歌声の響きに震え、
気付いた時には涙が頬をゆっくりと伝っていた。





歌い終わると彼女が僕の方を向いて、邪気のない瞳で見つめた。


「ひとりだけのクリスマスキャロルを聴いてくれてありがとう」


そう言って花が綻んだかのような笑顔を見せた。

その瞬間、まるで彼女の周りだけが白日に照らされたかのように輝いて見えた。




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