聖夜に舞い降りた天使
「あなた、名前は?」
突然名前を聞かれ、これが現実なのだという実感と共に心臓の鼓動が速まる。
「ルネ……」
ただ名前を答えるだけで精一杯の自分が情けない。
「素敵な名前ね。私はアンジュ」
「Ange……
やっぱり君は天使だったんだ……」
フランス語でAnge=天使という名前に
僕の思いは確信へと変わっていた。
「えっ?」
彼女が不思議そうな顔をする。
(しまった。心の声が外に出てた……)
「いや、ここを通る時に掌を天に翳してクリスマスキャロルを歌う君が
本物の天使みたいに見えたんだ」
「ふふっ、それって最高の褒め言葉よ。
ありがとう、ルネ」
名前を呼ばれてドキン、と鼓動が跳ね上がる。
そんな自分が居たたまれなくなり、俯くと……
なんと彼女はこの極寒の空の下、部屋履き用のブーツしか履いていなかった。