聖夜に舞い降りた天使
恋の自覚
その手は驚くほど冷たく、華奢だった。

指なんて、細すぎて少しでも衝撃を与えたら折れてしまうんじゃないかと思った。


ガラス細工に触れるように柔らかく彼女の手を包み込むと僕たちはアパルトマンへと向かった。





街灯の先にある道を過ぎて右に曲がると
赤や黄色や緑の色鮮やかな屋根が連なるアパルトマンが建ち並ぶ。

その一番端にある赤の屋根が僕の住むアパルトマンだ。





モントリオールの冬は雪深い。

積雪で扉が開かなくなるのを避けるため、どの家の扉も高い位置にあり、扉まで5〜6段の階段が伸びていた。





(今朝雪掻きしたばかりなのに、もうこんなに積もってる……)


滑らないようにアンジュをしっかりと支えながら階段を昇る。

築100年を超える古い造りの家は扉もかなり年季が入っていて、鍵を開けるのにもちょっとしたコツがいる。


錆び付いた扉を開けると家の中は真っ暗で全く人の気配がなかった。

いつもは学生達で賑わうリビングルームがクリスマスホリデーで僕以外はみな家族の元へと帰省している為、暗然としていた。


玄関マットで雪を払うと、革靴とジャケットを脱ぐ。

アンジュもそれに従って部屋履き用のブーツを脱いだ。


リビングルームのソファを通り過ぎながら指を指す。


「ここに座ってて。今、コーヒー入れるから」




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