聖夜に舞い降りた天使
エッグノッグをシナモンスティックと一緒に鍋にかけ、仕上げにナツメグとオールスパイスを散らした。

これは僕が育った孤児院の院長からの直伝のレシピだ。


「アンジュはいくつ?」


「えっ、年?18だけど……」


「ならお酒は飲める年だね。ラム酒入れる?」






ケベック州では18歳からお酒を飲むことができる。
ちなみに隣のオンタリオ州は19歳からと州により異なっている。





「私お酒飲んだことないの……
でも飲んでみたい」


(18歳になってから、というよりもそれ以前にお酒飲んでる人も多いのに珍しいな……)


「じゃ、少しだけ入れるよ」





キッチンの食器棚の上にあるラム酒を取ると、勢いがつかないように慎重に入れた。


「ルネは飲まないの?」


(僕はいいよ)


そう言おうと彼女に目を向けると、その表情から一緒に飲みたいという意思がありありと窺える。


「じゃ……僕も飲むよ」





ちょうど鍋にはあと一人分のエッグノッグが残っていた。





2人でマグカップに注いだエッグノッグをソファまで運んだ。







セントラルヒーティングのお陰で部屋は暖まっていたが、
彼女の冷えきった身体を早く温めてあげたくて暖炉に火をつけることにした。





本当は禁止されているんだけど、僕だけがこの家にいる間、面倒くさいので薪を暖炉の隣に積んでいた。

その太い木で土台を作り、細い木を効率よく組んでいき、マッチで新聞紙に火をつけると投げ込む。

その一連の作業をアンジュは注意深く見守った。


「暖炉の火って、見てるだけで身体も心も温かくなるのね」


アンジュは柔らかく微笑んだ。




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