続 音の生まれる場所(上)
彼がドイツへ旅立ってから三度目の春がきた頃、カズ君とバッタリ会った。三月の定期演奏会後の、打ち上げからの帰りだった。
酔っ払いにぶつかられ、いちゃもんをつけられた。怒鳴る相手に睨まれていた私を、助けてくれたのが彼だった。
「やめろよ、おっさん!」
いきなり間に入ってこられた。
酔っ払いの男性は、どう見ても「おっさん」と呼ばれるような年齢には見えなかった。
「誰がおっさんだ!」
当然怒った。カズ君は、その人の言葉なんて気にも留めず、私の腕を掴んだ。
「ほら、行くぞ!」
ぐいっと強引に引っ張る彼の後を、足をもつれさせながらついて行く。
何が起こったのか見当もつかないまま歩き出して、しばらくすると、その人がクルッと振り返った。
「もういいか…」
安心したように手を離した。
涼しい顔をしてる彼とは反対に、私の息は切れ切れだった。
「…あの…助けてもらって…文句言うのも変ですけど…何なんですか?あなた……」
ゼェゼェ…吐息を切らして睨む酔っ払いの顔を、彼は呆れたように眺めてる。
言うことを聞かない子供を見るような目をして、背の高い人は喋った。
「俺は江上和馬だよ。真由子」
覚えてないか?と自分を指差す。
その彼の顔をまじまじと見つめ、古い記憶を呼び起こした。
(エガミ カズマ…?どっか聞いたことがあるような……)
「…あっ!もしかして、同じ登校班だったカズ君⁉︎ 」
泣き虫で、いつも手を引いて登校してた子のことを思い出した。
「そっ。当たり!」
ニカッと笑った顔は、子供の頃によく似てる。それと記憶とが一致して、大喜びで声を上げた。
「元気だった⁉︎ うわー、懐かしいっ!」
酔っ払って、かなりはしゃいだ気分だった。彼と話をしながら歩き始めて、駅へ向かった。
酔っ払いにぶつかられ、いちゃもんをつけられた。怒鳴る相手に睨まれていた私を、助けてくれたのが彼だった。
「やめろよ、おっさん!」
いきなり間に入ってこられた。
酔っ払いの男性は、どう見ても「おっさん」と呼ばれるような年齢には見えなかった。
「誰がおっさんだ!」
当然怒った。カズ君は、その人の言葉なんて気にも留めず、私の腕を掴んだ。
「ほら、行くぞ!」
ぐいっと強引に引っ張る彼の後を、足をもつれさせながらついて行く。
何が起こったのか見当もつかないまま歩き出して、しばらくすると、その人がクルッと振り返った。
「もういいか…」
安心したように手を離した。
涼しい顔をしてる彼とは反対に、私の息は切れ切れだった。
「…あの…助けてもらって…文句言うのも変ですけど…何なんですか?あなた……」
ゼェゼェ…吐息を切らして睨む酔っ払いの顔を、彼は呆れたように眺めてる。
言うことを聞かない子供を見るような目をして、背の高い人は喋った。
「俺は江上和馬だよ。真由子」
覚えてないか?と自分を指差す。
その彼の顔をまじまじと見つめ、古い記憶を呼び起こした。
(エガミ カズマ…?どっか聞いたことがあるような……)
「…あっ!もしかして、同じ登校班だったカズ君⁉︎ 」
泣き虫で、いつも手を引いて登校してた子のことを思い出した。
「そっ。当たり!」
ニカッと笑った顔は、子供の頃によく似てる。それと記憶とが一致して、大喜びで声を上げた。
「元気だった⁉︎ うわー、懐かしいっ!」
酔っ払って、かなりはしゃいだ気分だった。彼と話をしながら歩き始めて、駅へ向かった。