最後の恋愛Ⅱ
「行こうか」

大麦の手が私の腰にまわる。

「やっ!」

何をする大麦っ!

血迷ったか!

「さ、触らないでくだしゃい!」

は!

噛んだ!

日下部さんと柳生さんが連れ立って店の中に入っていく。

その後を紅くなりつつ追いながら、大麦がくすくすと笑う声を聞いていた。

「笑うなってば!」

「だって、大和・・・くだしゃいって。」

「ちょっと噛んだだけでしょ!」

「ははっ、可愛い。ムキになっちゃって。」

「からかわないでください!」

「くだしゃいだろ?」

「もぅ、大麦っ!」

「隼人、って呼べって言ってるだろ?」

大麦の腕が、私の腰にまわり、私の体を瞬く間に引き寄せる。

はわわっ

だから、なんだってこいつはこんなに手際が良いんだっ。

ちかっ

近すぎる、大麦の顔が目の前にある。

「ん?言ってみて。」

「いいいいい、言わない!」

声が思わずうわずる。

「何で、簡単だろ?ほら。」

あわわわっ

息、息が頬にかかる。

大麦の長いまつげ、りりしい眉、それから切れ長の瞳、力のこもった眼差し・・・

射るような熱い視線に、一気に顔が、体が熱くなる。

ダメだダメだ!

流されるな、私っ!
< 117 / 226 >

この作品をシェア

pagetop