最後の恋愛Ⅱ
女はいつだって、女優だって、何かの番組でも言ってたじゃない。

そう、確か似たような台詞をどこかで聞いたような気がするもん!

煩悩を捨てろ!

プロになるんだ、あ~ん選手権に出ているんだと思え!

ぐっとこぶしを握り締めて、指先のさくらんぼをキリキリと見つめた。

「い、いくわよ!」

大麦は、ふっとくすぐるように微笑んで、薄く唇を開いた。

「はい、あ~ん」

と、そう言って。

ああああ・・・

大麦の薄く開いた唇から見える、歯並びの良さと、厚い唇、舌先・・・それが近付いてくると・・・

まぁ、思ったとおりといえるだろう。

妙な気持ちになってくる。

う・・・い、いやいやいやいや!

私は、男じゃないよ?

それに欲求不満でも、ない!

ないはず!

私は、性欲はそんなに旺盛な方じゃないし!

は!

何を考えてるんだ、私は!

だいたい、こいつのこのエッろい唇がいけないんだ!

隙あらば私の唇を塞いで、複雑に舌を絡めてくる、そんな大麦が―

って、何でまたエロイ方向で考えてるの、私!

鉄壁を装った私の女優顔に、くあっっと熱がこもる。

薄目を開けた大麦がくすっと鼻を鳴らして微笑んだ。

「笑わないでよ・・・」

と、思わず小さく懇願。

「ごめんごめん」

と、大麦。

あああ・・・

こういうやりとりでさえも、胸がズクンとする。
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