最後の恋愛Ⅱ
大麦は、薄くいたずらっぽく微笑んでいる。

「めずらしいですね、森さんがぼーっとしてるなんて。」

「あ、ええ、ごめんなさい。」

そう言って立ち上がった。

ああ、もう嫌になる。

自分が自分でコントロールできないみたいな。

これで、大麦と付き合いだしたりしたら、私はどうなってしまうんだろう―。

「呼びましたか?」

大麦の前に立つと、もうすでにドキドキしはじめる。

仕事場の大麦は、ふたりの時とは全然違う顔をしている。

厳しげな鋭い瞳、けど、いじわるに微笑んだ唇。

だけど、見上げた目に、いつもの大麦が見える、その刹那・・・

きゅうっと胸が締め付けられる。

大麦は、私を見上げて、くすっと小さく微笑んだ。

むっ

私をこんな気持ちにさせてるのは、大麦のくせに・・・!

「用件は何でしょうか?」

と、思わず強めに言った。

マズイマズイ!

頬がついつい赤くなりそう。

集中!

「ああ、この前、先延ばしにした会議、柊も戻ってきたし、この後15時からで会議室とってくれる?」

ああ・・・

あの、あれ・・・

あれ・・・・ね・・・
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