届屋ぎんかの怪異譚
なら、あそこにいる晦は一体――。
そんな銀花の心を読むように、白檀は言う。
「犬神憑き、という言葉を知っているでしょう?……死んだあの子の亡骸に、犬神を憑けたのよ」
「犬神……!? まさか、蠱術に手を出したのか!?」
玉響が目を見開く。
こじゅつ、と、銀花は口の中で呟いて、眉をひそめた。
耳聡くそれを聞いた猫目が、すかさず「古い呪術の一種だよ」と耳打ちしてくれる。
「飢えさせた犬の首を斬り落として辻道に埋め、犬神という怨念の塊を作り出して、憎い者を呪わせる術。
白檀様は犬神を作り出して、死んだ晦様に憑けて、晦様の魂を犬神に取り込ませることで、晦様をつなぎとめたんだ」
なら――、と、銀花は振り返り、刀を構えて睨み合う二人を見た。
なら、あそこにいる晦は果たして、晦なのか、それとも犬神なのか。
「萱村事件は犬神の呪いよ」
低い声で、白檀は言う。
「晦と一体となった犬神の呪いで、屋敷中の人を、人の血肉を求める鬼へ変えて、殺し合いをさせた。……けれど、朔は生き残った」