届屋ぎんかの怪異譚
白檀は冷笑を浮かべる。
「千影」
冷たい表情とは打って変わって、優しい声で、白檀は猫目を呼んだ。
「朔を殺しなさい」
猫目は静かに目を見開いた。
「あなたはわたくしの忍びでしょう。親もなく、飢え死にしかけたあなたを、わたくしが拾ってわたくしが養ってあげた。そうでしょう?」
白檀の言葉に、猫目の指がぴくりと動いた。
くちびるを震わせ、その手が緩慢な動作で腰に刺した短刀を抜く。
「猫目、やめて……!」
「銀花、危ない」
思わず駆け寄ろうとした銀花の手を、玉響が掴んで止めた。
「今様、二藍! お願いやめさせて!」
銀花の叫びに、猫目の肩に乗る二匹は困った顔をするだけだ。
日頃は皮肉を言ってもやはり主人は猫目。
二匹が猫目の邪魔をするわけがなかった。
猫目の右手が上がる。
「やめて!」と叫んで、銀花はぎゅっと目を閉じた。