届屋ぎんかの怪異譚



犬神は封じられたという。


犬神は数えきれないほどの人の魂を喰らい、相当な力を蓄えているはずだった。


玉響と猫目の力をもってしても、退治するのは容易ではなかったのだろう。



あぁ、だったら――。そこで銀花は気が付いた。


犬神に喰われた魂たちも、一緒に封じられていることになる。



秀英――朔の、父も。



「朔」



ふと聞いてみたい気持ちになって、銀花は朔の名を呼んだ。



「ん、どうした」


「朔は、お父様が好きだった?」



突然の質問に、朔は意外そうな顔をしながらも、「そうだな」と頷いた。



「……お前にこんなことを言うのは気が引けるが……」


「いいの。話して」


「俺の前では、優しい父上だった。よく剣術を教えてくれた。そのたびに、強くなれ、と言っていた。……いつか大事な人ができたらその人を守れるよう強くなれ、と。屋敷の大人たちもみんな優しかった。将来は、自分が父上に代わってこの家を守っていくのだと、信じていた」


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