届屋ぎんかの怪異譚
そう、と、銀花は微笑んだ。
――ならば、決まりだ。
朔のために、最後にもう一仕事、自分にできることがある。
「あたしね、朔、隠していることが一つあるの」
朔は何も言わずに続きを促す。
「あたし、家族が恋しくて、水月鬼のことを調べた時期があったの。水月鬼は数が少なくて、湖の底に異界を作って住んで、めったに人前に姿を現さない。だから存在もほとんど知られないし、伝承もない。けれど諦めきれずに、いろんな妖に話を聞いたの。……代わりに妖たちのお願いを聞いたりして、ね」
「なるほどな。それでいつのまにか届屋なんかしてたと」
「ふふ、そうなの。それでわかったことがあるの。……水月鬼はね、満月の夜の間だけ、幽世と現世を繋ぐの。夜に月を映す水鏡のように」
朧車の窓から月が見えた。
丸く、明るい月。
けれど、空はうっすらと明るくなってきている。
「――水月鬼は、死者を満月の夜の一晩だけ、よみがえらせることができる」
朔が切れ長の目を大きく瞠った。