新婚の定義──嘘つきな君と僕──
夕食後、ユウはお風呂に浸かりながら、ぼんやりと考えていた。

(レナ、酔っ払って夕べのこと覚えてないのかな…。)

いつも通りのレナに違和感を感じる。

夕べのレナの言葉は本当なのか、嘘なのか。


(もし本当なら、嘘つかれてたのは確かにショックだけど…。レナに人並みに恋愛経験があったとしてもおかしくはないよな…。実際レナはモテるんだから、オレと付き合うまで、まったく誰とも経験がなかったって方が稀と言うか…奇跡と言うか…。)

学生時代、何人もの男たちに告白されては無表情で断っていたレナを思い出して、ユウは苦笑いした。

(告白したヤツらは秒殺でフラれて…告白もできなかったオレがレナと結婚して…。世の中って不思議だよなぁ…。)

自分の知らないレナが、誰と何をしてきたのかは知らない。

でも、自分のしてきたことを考えたら、レナを責める資格はない。

わかっているのに…胸の中がモヤモヤして、ざわざわとイヤな音をたてる。

(レナはオレだけのレナだって自惚れてた…。誰も知らないレナのすべてが、オレだけのものなんだって…。)



お風呂から上がったユウは、ソファーに座ってビールを飲みながら、昔の男といて懐かしさ以上の特別な感情が生まれたりはしないだろうかと考える。

(二人で飲みに行って、あんなに酔って帰ってきて…何もなかったのか?)

ユウは思わず、相川に抱かれるレナを想像してしまう。

(まさか…。)

タバコに火をつけ、煙を吐き出しながら、ユウは頭をかかえた。

レナは何も言わない。

もしかしたらと思うと、途端にユウの胸はイヤな音をたてる。

(レナが他の男と…。)

想像したくもない場面が頭に浮かんで、ユウは息苦しさに胸を掴む。

(オレだけのレナじゃなかったのか…。)

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