自惚れ男子の取説書【完】
「すみません、クレンジングとかありがとうございました」
片手を挙げ応答する小田さんは、もうテレビを見ていなかった。ダイニングテーブルに書類の山を広げ、小難しい顔でそれを睨んでいる。
「腹減った」
顔もあげずに呟く小田さん。
答える代わりに自分のお腹をさすって考える。昨日、十分に食べたせいか私のお腹はさほどでもなさそうだ。
「そうですか?昨日は結構食べましたし、胃もたれてません?」
「お前がどうかは知らん。何か飯作れ」
「はぁ……えっ…?えっ!!」
いや…お腹すいてないし。ってそんな問題ではなくて。何で私が作らなきゃなんないの!手料理振る舞うなんて、心の準備ができてない。
「誰が寝床までやって、醜態さらす女に服まで貸してやってるんだっけ?」
「よっ…喜んで作らせていただきますっ!!」
……逆らえない。
深々頭を下げると、のそのそとキッチンへと向かった。
色々言ってやりたい事はある。けど、今日ばかり大人しく小田さんの要望に応えるしかなさそうだ。