自惚れ男子の取説書【完】
その後ろ姿に僅かな申し訳なさを感じながら、安堵して思わず息をはく。
それとほぼ同時、私はまた別の戸惑いの波に一気にさらわれていった。
どんな顔をして話せばいいのか。とてもじゃないけど顔を見る勇気もない。
「ありがとう…ございました」
私は正面を向いたまま小さく呟いた。明らかに空気が冷たく変わったのが肌で分かる。さっきのまるで恋人のような雰囲気から一転、距離を取るよう慎重に言葉を選んだ。
「すみません、変な所お見せしてしまって。お忙しいのに巻き込んでしまってすみませんでした」
松山さんと話していた時とは比べものにならない緊張が私の声を震わせた。揺れる視線、手に滲む汗。顔を見られたら全て見透かされてしまいそうで、私は俯いているしかなかった。
何か言ってよ…。
私のなけなしの勇気と精一杯の会話も完全無視。聞こえてないみたいに、小田さんは何も返してくれない。