自惚れ男子の取説書【完】
なんであんな事をしたのか、未だに自分でもよくわからない。
ただあいつを拾ったあの日。
『善次郎さん……ごめんなさい』
そう寝言で繰り返し涙を流す姿から目を離せなかった。
『私のせいだ』
そう言って誰かの為に涙を流すことにただ驚いた。状況は明らかに不審者だったし、放っておいても問題はなかっただろう。
ただ、その涙を誰にも見せたくなかった。ただ見とれて…俺の物にしておきたかった。
「おい、もっと良い写真あるだろ」
「ぅあっ…!びっくりしたぁ!」
夢中で写真を見ている背中を抱きしめたい衝動をぐっと堪える。
俺らしくもない。そんながっつく様見せてたまるか…と、いつも通りを心掛け隣の椅子に腰かけた。
「なんだこれ。撮ったのあの人だろ、下手すぎる」
ちょうど見ていたのは俺と美月がバージンロードを練習している様子だった。構図とカメラの腕からいって撮ったのは母親だろう。