自惚れ男子の取説書【完】
「ちゃんと歩けました?」
不意をつかれて思わずぴくりと顔がひきつく。
「ちゃんとも何も歩くだけだろ。俺の結婚式でもねぇし緊張する事でもないだろ」
嘘じゃない。緊張はしてなかった。
しかし本番、あれだけ言った一礼を忘れた俺はバージンロードを歩く間中ずっと美月のにやにやに耐え続けなければいけなかった。
ニコニコ、でもなくにやにやする花嫁…俺なら絶対お断りだ。
案の定、挙式の後の美月は絶好調で
「大和、あんたどうせ琴美ちゃんの事でも考えてたんでしょ」
と俺を小突いてきやがった。
思わず寄せた眉間に気付いたのか、ふっと笑いが聞こえそのまま睨んで威嚇した。
ったく……こいつもこいつで、たまに無意識に痛い所をつくから厄介だ。
「やっ、やっぱり美月さんキレイですね!これとかほらっ、雑誌みたい!」
「あぁ?違うわ、俺のカメラの腕だろ」
慌てて俺の機嫌を伺う様子が何とも可愛くて、もっと苛めてしまいたくなる。
女にご機嫌取りをされるのは正直嫌いだ。うざったいだけで、フォローするのも面倒。ただこいつだけは、色んな顔を見ていたいしそれだけで愛しい。
着飾った美月より、俺の隣ではしゃぐお前の方がよっぽどキレイだ……なんて言ったら卒倒しそうだ。動揺させるのも面白そうだと考えるあたり、俺も相当重症だな。