自惚れ男子の取説書【完】
小田さんが睨んでたのは、さっき入れたばかりのキーホルダー。他に鍵置き場なんて知らないし。他があるなら先に言ってくれれば良いのに。
「小田さん仕事しすぎて頭回ってないんですか?」って思ったのが顔に出てたらしい。ひどくむすっとした顔がこちらを向いた。
「んな事言ってんじゃねえよ。ここ入れるからお前置いてくんだろ、鞄入れとけよ」
「あぁなるほど鞄って……え?」
言ってる意味はわかるけど噛み合わない。そんな空気を感じたのか、小田さんはため息をこぼし眉をハの字に下げた。
「だから、いちいち持ってくのめんどくせぇからちゃんと持って帰れって言ってんの。もう何回持ってったよ俺」
「え?でもこれ無いと美月さんとか困りません?」
今度こそがっくり肩を落とすと、壁に頭をあずけ腕を組んだ。
「お前、これただのスペアキーとか思ってるだろ」
「え、だってそうですよね?スペアキー」
だって今日だってこれで入ってきたし、どう考えたってスペアキー。
あぁ本当に小田さんはお疲れなんだ、と心配する間もなくギュッと鼻先に鈍い痛みを感じた。
「スペアキーだな、確かに。でもそれを世間では合鍵と言うんだ、あ?分かったか鈍感」
「おだはん、いひゃいでふっ!」
そのままくいっと軽く引っ張られツンとする鼻先。じんじんと痺れる先には呆れ顔の小田さん。