自惚れ男子の取説書【完】
行き場の無い羞恥心をぶつけるみたく、わしゃわしゃと頭をかき乱される。本当なら文句の一言も言いたくなるけど、そんな行為が愛しくてふふっと笑いがこぼれた。
「言ってくれれば良かったのに」
「だから今言った。ってか分かれよそれくらい」
「だって小田さんが言ったんですよ、ちゃんと言いたい事は言えって。一瞬、前の彼女の持ち物かと思いましたよ」
ははっと何の気なしに呟いた一言。前に進むはずの背中がぴたっと立ち塞がった。
「ほぉ……そうか。俺が昔の女に渡したと」
あぁ……この笑顔はまずい。
「よく見ろ。こんな新品のスペアキー、どっから見ても使った痕跡なかったろうが。それに鍵預けるなんて勝手に来られてめんどくせぇだろ」
「ははっ……ええと、でもそれ私持ってていいんですよね?……あれ」
わぁ、小田さんったら耳まで真っ赤。
あまりの照れように笑うことも出来ず、つられてこっちまで赤くなってしまう。私だけは特別、みたいな…そんな言葉がくすぐったい。
「やめた」
履きかけの靴を脱ぎ去ると、ぐいっと私の手首を掴みリビングへと踵をかえす。
「えっ、小田さんちょっと!コンビニは!」
「いい。先にお前食う」
腕ごと引き寄せられベッドに押し倒されると、身体中に広がる甘い感覚。
結局そのまま小田さんがお腹いっぱいになるまで残さず食べられてしまった。
*END*