自惚れ男子の取説書【完】
どす黒い感情がゆっくり広がるのを感じながら息を吐いた。

「○○ビル、いたじゃないですか」

それ以上は言えなかった。啖呵切ってやりたい気持ちもあったけど、口にするほど自分が惨めで泣きそうだったから。
その一言だけで効果はてきめんだったようで、小田さんの周りが一瞬でピンとはりつめるのがわかった。

なんでよりによって今日なのよ。

明日は久しぶりに小田さんと1日休みが合う。休み希望も出して、ずっと楽しみにしてたのに。

鬱々とした気持ちに浸りつつあると、一瞬遠のく小田さんの足音。再び近づくと、私のすぐ後ろに腰をおろした気配がした。

「なぁ…ちょっとこっち向けって。日付変わっちまうだろ」

その一言に思わず振り向いた。

「ほら」

「えっ……?」

照れたように視線を外しながらつき出されたのは小さな紙袋。それは見覚えのあるブランドので、戸惑った私は小田さんの顔と交互にそれを見やった。
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