もう一つのダイヤモンド
「香江はいつ頃引っ越す予定?」

「私は、4月に入ってからでいいかなと。全然家の片付けをしてないし、引っ越し屋さんもすくし、平日なら安いかなと思って。」

引っ越したいとは思っていたけれど、まさかこんなにすぐに具体的になると思っていなくて。それに、隼人さんが藤が丘に行ってしまうまで、せめて、近くにいる間は、ゆっくりいっしょに過ごしたいなと思っていた。隼人さんの引っ越しはあるものの、私までだと本当にバタバタしてしまいそうで。

「うーん、じゃあ香江が引っ越すまでの家具置き場代として、家賃払うよ。」

「ダメですよ。」

「だって、トランクルームに置いても金かかるし、それにいっしょに住む家だし。」

「もし、いっしょに住むってなった時に、別の所に引っ越してもいいと思うんですけど。」

今、いいなと思っている物件は、大学病院からは少し離れてしまうので通勤がかかりそうな場所になる。

「それはそうなんだけど。」

隼人さんの声がちょっと尖った感じがする。

その声の強さにどうしていいか分からなくなり、下を向いて唇を噛み締める。

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