夜人【ヨルヒト】さん
「う……ううっ……」

スカートの上で握り締めた手が震えた。

抑えようのない恐怖が、内面からとめどなく湧きあがってくる。

(怖い……怖い……)

言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡った。

(でも……もう他に方法なんてない)

涙を拭いながら、差し伸べられた手を見る。

唇を固く結んだ、ユキオミの真剣な顔を見る。



トキコの震える手を、ユキオミが握り締めた。

冷え切った手に伝わる温もりが、最後の命綱に思えた。
< 195 / 199 >

この作品をシェア

pagetop